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Shinobu Presents


第二十二話 「定番といえば定番..」
 こう..なんて言うの?
 前から思ってはいた事なんだけど、どうして女子高生だけで泊まりになると、いつもこういうネタで盛り上がるんだろう..。
 今日も例によって例のごとく、ハイテンションな会話が飛び交っていた。今回のメインはハル。彼女はベッドから降りて、栞の勉強机の前にあった形のスリムなイスに逆向きに座っていた。もう背もたれの上に手を乗せて語りモードに入っている。
 栞は座布団の位置を少し変えながら彼女の語りに聞き入っていた。
「やっぱね、彼はそのいい加減な性格って治すべきだと思うのよ。私が部屋に入って、思わず引いちゃうくらいに部屋が汚いって犯罪だと思うのね」
「ぐうたらなハルが驚くくらいだから、相当汚かったんだろね」
 栞が笑いながら手の中のお菓子をまた一つ口へと運ぶ。
 私はハルのいなくなったベッドに寝転がりながら、栞の手元のお菓子に身体をのばして、いくつかつかむ。
 こんな間抜けな姿、真一君が見たらきっと絶望するだろうなあと思いながらも、足下にあったリモコンを靴下のまま軽く押す。すると、最後まで回って、止まっていたCDが再び動き出した。
「栞はどうなのよ。敦史君って喫茶店やってるくらいなんだから、結構きれい好きなんじゃないの?」
 ハルのその言葉に私は思わず息を止めて勢いよくベッドから体を起こした。
「やっぱり栞って敦史君と付き合ってたの!?」
 私の声に栞は「冗談やめてよ」と言いながら、ハルの方をにらんだ。
「何で私が敦史と付き合うわけ?あんなデカイ男、興味ないよ」
「え? 違うの?」
 ハルも私と同じ事を考えていたらしく、拍子抜けた顔で栞を眺めた。
 私も思わず力が抜けてベッドに倒れ込む。やっぱり私にも世間の女子高生の血が脈々と流れているんだと実感しながら。
「私はもうちょっと理性的なのに興味があるの。あんなのは趣味じゃない」
 と言って、栞も呆れ顔で後ろのタンスにもたれかかった。私は完全に意表をつかれて、ついつい何も話さずにお菓子だけを口に運んでいた。
「驚いたあ..。栞って敦史君と絶対できてると思ってたのに..。だってよく彼と二人で遊びに行ったりしてるじゃない」
「友達と遊びに行くのは悪い事じゃないと思うけど」
 彼女の言葉に、私も確かにそうだと思い、これ以上は何も聞けなくなってしまう。 絶対確信していたのに..。まさか違うとは..。
「ね、ね、未帆はどうなの? もう引っ越して来て三ヶ月も経つんだから、誰かいるんじゃない?」
 ハルはまた嬉しそうな顔で私の目をのぞき込む。今度のターゲットは私になってしまった。私は思わず明後日の方を見ながら、少し心の奥で迷ってしまう。
 ..確かに、いないわけではないけれど、あれはどうなんだろう..。縁はなさそうだし、正直言うと私もあまりこう..情熱的に好きというのとは性質が違うというか。
 そんなことを考えていると、栞もハルも黙り込んで、笑いながらじっと私の方を見ていた。気が付いた時には、もはや逃げ道はなくなっていた。
「早く、早く」
 ハルがイスの背もたれを叩きながらせかす。私ももうあきらめて、他の誰に聞かれているわけでもないのに、その名前を小声で口にした。
「真一君....」
 黄色い歓声がハルの高い声で響き渡る。栞はなぜか何も言わずに笑顔のまま黙っていた。
「そうなんだ! 未帆と真一君。何かいい感じじゃない?」
 ハルは栞に向かってハイテンションな声で言い放った。栞は相変わらずの笑顔のまま、首を軽く傾けた。私はその仕草が少し気になって、聞いてみようかと思ったが、それを察したかの様に栞はジュースを取りに行ってくると言って、部屋を出ていった。
 私はその後ろ姿が妙に気になってはいたけれど、結局ハルの質問攻めにあいながら、その場を動くことは出来なかった。
「ね、何で何で。どのへんがいい? 確かに彼、すっごく優しいとは思うけどさ。他に」
 彼女はイスから立つと、勢いよくベッドに飛び乗り、私の隣に横たわった。
「んー、いろいろあるけど..」
 と言いながら、ハンガーに掛かった自分の服を眺め、やはりあのクロスペンダントの事は伏せておこうと思った。自分の中で大事にしまっておきたいこともあるような気がした。
「彼、おもしろいし」
「他に何かさあ」
 と、物足りないと言いたげに彼女は私の隣に寝ころんだまま、まっすぐに私の顔を見た。彼女の顔をここまで近くで見たことはなかったけれど、こうしてみると、ハルは結構綺麗だと思う。あの強烈な性格が先入観であるから、あまり今まで気づかなかったけど。
「ねえ..」
と彼女の止まらない言葉を聞きながら、私は少し遅い栞のことが気になりはじめた。時計を見るともう深夜の三時二十分。栞が出ていってもう十分くらいは経つ。
「栞、遅いから私もちょっと見てくる」
 私は思わずそういって、ベッドから身をおろした。ハルは少し眠そうな目で部屋を出る私に手を振っていた。

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