Shinobu Presents
携帯が鳴った。メールの着信だった。 鞄から取り出し、のぞいてみる。栞からだった。 エピローグ 『今度の21日、学会で東京行くんだけど、未帆ヒマある?? あったら飲もうよ!』 相変わらず。と思いながら道路の街路樹の下で日を避け、返信を打つ。 東京の夏は意外と暑い。こっちへ戻ってからはもう一年以上。相変わらずの人混みには慣れたけど、この暑さはどうにも慣れない。 返信を打ち終わると、樹の影から出て再び歩き始める。 今日はよく晴れている。 こんな日の表参道は、緑が活きていてとても好きだった。何度この道を歩いても飽きない。 待ち合わせの時は少し遠回りでも必ずここを通る事にしていた。 あれから。 二年と少し。 敦司君は結局体育大に無事合格して、今はしっかりとレギュラーのポジションをキープしているんだとか。 昨日送ってきた二枚の案内パンフレットはしっかり鞄にも入っている。 栞は。メールでも言ってたけれど、京都で研究漬け。彼女らしいなと思う。 来週にはまた東京に来るそうだから、四人全員で飲めたら。きっと楽しいだろうな、と自分の中で早くも計画が立ち始めていた。 表参道をある程度歩くと駅前にたどり着く。 待ち合わせはここなので、近くの花壇の脇に座る。 また来た栞からのメールを返して携帯を鞄の中に戻す。もう鞄の中に楽譜が詰まっているのには慣れたけれど、今でもたまに信じられない事がある。 自分が音大に通って、音楽を本格的に勉強しているなんて。 こうして、半袖を着て東京で音楽を勉強している自分を。高校の時は夢見ていたけれど、それがある程度叶っているのが不思議になる事がある。 それだけ高三の頃、彼と会えるのを楽しみにして頑張ってたんだなと今更、実感する。 そんな結果。今こうしている自分には満足しているんだけれど。 「未帆」 私の上から声がする。座った私を見下ろす形で真一がそこにいた。 「時間通りだね」 「いつも通りでしょ」 そう言って立ち上がる。ヒールのある靴を履いてもまだ彼の方が少し背が高い。こうして肩を並べて歩くようになって初めて気づいた事だけれど。 「行こうか」 彼の言葉にうなづく私。東京でのいつもの景色。 彼の手に腕を絡め、私達は表参道を戻り始めた。 Fin Shinobu Presents
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