初めて小説を書かれる方や、スランプで思い悩んでしまった方へ向ける、小説の書き方講座集です。
難易度ごとに分類していますので、ご自分の希望する分野をお好きな順で是非どうぞ♪

□些細なそぶりが人を表す

ちょっと、思い出して頂きたいんです。

腕時計って普段どんな風に付けられますかね?

多くの場合。
男性は手の甲側に。女性は手の平側に付けられますよね。
(女性の方はそうでもないですが、男性が手の平側には付けませんよね)

これが普通です。

しかし、私、実は先生をしている間だけは手の平側に付けておりました。
(普段はもちろん手の甲側につけています)

なぜか。

それは、授業をする時「時計を見ているとバレる」からです。

講師は普通、右利きの場合は右手にペン(チョーク)を持ち、左手にテキストを
持ちます。すると左手の甲側に時計が付いていると、時間を見る時に一旦手を裏返す事になります。
(つまり、テキストが下を向きます)

明らかに。「この先生、時間を気にしてる」とわかりますよね。生徒側から見ると。

講師としては、生徒に「この人、僕達の事より時間の事ばかり気にしてる」と思われれば、
そこで終わりです。
しかし、講師である以上、時間内に全てを教える必要があります。
時間配分を気にしない訳にはいきません。

そこで私の場合、時計を反対に付けていました。テキストを見ながら、
ふと目線を下に下ろすと腕時計がこっちを向いている状況です。
こうしていると、「時計を見ている」と思われる事なく、
時間配分をできますよね。

他の講師の方に伺ってみると、教壇の上に懐中時計とテキストを置く方や
教室の後ろに掛け時計を付けて貰う方などもおられました。

いずれにしても、「良い講師になるには、見えないように時計を見ろ」という
鉄則を守るための方法です。


つまり。
時計を手の平側につける男性というのは、少し普通からズレています。
普通からズレているという事は、そこには必ず理由があります。
そして、その理由は多くの場合、その人の考え方を表すものなのです。


で。

これを踏まえた上で、小説のお話です。

小説を書く時、意外と難しいのは「普通のシーンを書く事」ですよね。

普通のシーンを普通に書くと、本当に意味のない文章になってしまいます。
しかし、いちいち日常のシーンを衝撃的なストーリーや文体にする訳にもいきません。


また、一度きりの脇役(名前もないキャラ?)も難しいものです。
ただ通り過ぎるだけのキャラクターならば書く意味がほとんどなくなってしまいます。

かと言って、名前もないキャラクターにまで人生哲学や生き方を語らせる訳にも
いきません。(それ、とんでもない脱線ですものね)


こういった「特徴のないシーン」に何かのアクセントを加えて、普通路線から
少しだけ外す方法のひとつとして、先ほどの時計のようなテクニックがあると
思います。

例えば。
あなたがカフェでお喋りするシーンを書くと考えてみて下さい。

会話の内容が大切なのはもちろんですが、それだけを見ていると、カフェである必要が
そもそもありません。レストランでも、道端でも自宅でも良いですよね。

なぜそこなのか。そこにはどんな人がいるのか。
そんな事まで書ければ、小説の世界観がぐっと広がります。
しかし。ウエイターさん一人一人にまで、いちいち性格を書き分ける事も出来ません。

では。例えばこういう時、
コーヒーを持ってきたウエイターさんの手の甲に小さく、「emi」と
女性の名前がタトゥーで彫ってあったら? 


少なくとも、この人は恋人か奥さんがいて、かなり仲が良いんだろうなと
わかりますよね。

普通に「その時、ウエイターがコーヒーを持ってきた」と一行で済ますのか、
あるいは、コーヒーを置く手の甲に小さく「emi」とあったと書くのか。


これだけで、この「コーヒーが来た」というワンシーンが
全く意味のない、間を取るだけの文章から、少しだけでも何かを感じられる
シーンへと変わりませんか?

この「emi」という一つの特徴があるだけで、「名もなきウエイター」から
「彼女(奥さん)と仲の良いウエイター」へと変わりますよね。

『このウエイターは私生活では幸せだった』なんて書く必要もありません。
それでも、「幸せなんだろうな」とわかります。

小説では多くを語りすぎてはいけない、とよく言われます。
私個人としては、こういう意味なんだろうなと思っています。


人と少しだけ違う特徴というものには、必ずその背景と考え方が滲み出ます。


それを表現する事が出来れば、抽象的な「彼は○○という考え方をしていて」の
ような文章を省く事が出来ます。(つまり、より具体的な小説になります)


どうにもシーンがイメージ出来にくい、とお悩みの時は
是非一度、この方法を試してみて下さいね☆


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