書き上げたばかりの小説をさっと読み返した時、あなたはご自分の小説を読んで
どんな事を感じられますか?
私も先日長編を書き上げたのですが、一言目が
「テンポ悪すぎ…」
でした。
熱中して書いていると文章の一文一文には注意しますが、ページ全体での流れの
速さなどはあまり気にならなくなります。自分の頭の中ではドラマや映画のように
物語が流れている(映像として見えている)ため、文章で「読者様がどう見えるか」は
気にならなくなります。
しかし一度頭を空にして全体を読むと、あとで唖然とする事が多くあります。
こんな時に必要なのが「テンポコントロール」です。
言葉数が少なすぎて、情景があまり浮かばずにストーリーばかりがトントン拍子で
進んでいく小説に、「状況説明」や「新たなエピソード」を加えてテンポを落とし
イメージしやすく修正していく方法です。
例えば、先ほど出ました「なんじゃこりゃ」と思った私の長編のある一文の場合。
「彼は六本木で降りると昼間から飲んでいる黒人達とすれ違う。軽く笑顔を送り、
階段を駆け上がった。駅前の路地に入り、地下の店へと足を踏みれる。
オープン間近、スタッフがドリンクの準備にいそしむ」
これを読んだ時、どのように感じられるでしょうか。私の場合、駅を降りた辺りは
まだ良いですが駅を出てお店に入るまでが、あまりに飛びすぎだと感じました。
映画で言うと、電車を降りたシーンはちゃんと描かれているのに、改札や駅前は
一秒ほど画面に移し、ぱっと店内のシーンに切り替わっているイメージです。
画面の切り替えが早すぎて、映画の場合「目が痛い」となる撮り方です。
こういった事が頻繁にあると、読者様は展開の速さについていけなくなります。
そこでここは一旦テンポを落とさなければなりません。
落とし方。これが問題です。
単に「彼は改札に切符を通し、西側の出口から横断歩道を渡り、デパートの裏路地を
通り寿司屋の横の階段から地下へ降りた。そこに彼の店があった」では、あまりに
単純すぎですよね。
映像としては繋がりますが、この文章にあまり意味がありません。
これもストーリーがダレるひとつの原因になります。
方法は様々ですが、例えばこの場合、主人公に考え事をさせるのも手です。
交差点で信号待ちの間、初めて六本木に来た時の事を思い出させます。
あの頃、この交差点で店がどっちかと地図を見て悩んでいた。そして初めてドアを
開ける時、帰るかどうかとかなり悩んだ…。
こういった考え事をしている間に信号が変わり、彼はサラリーマンの後を追いながら
信号を急いで渡る。
こうした方が、店への道にイメージが沸く上、過去を振り返るという「意味」
(ストーリーの奥深さになります)がプラスされます。
他にも、「いつもこの時間、この通りを歩いているとオレンジのコートの女性が
裏通りへと入っていく。彼女とは次の交差点で反対方向だが、彼女は一体、
何の仕事をしているのだろう」
という様なシーンを入れるのも手です。
ストーリーに不思議さを加え、この六本木の裏通りという独特の雰囲気を
暗に表す助けにもなります。
「小説は最初は長めに書き、後から削っていく方が良い作品になる」
と言われますが、実際はどうしてもテンポを落とすために付けたしを
しなければならない事があります。
その時、単に状況説明文を入れるのではなく、「暗に意味を含んだ」文章を
加えてあげて下さい。
そうすればストーリーがダレる事なく、情景が浮かぶ文章となると思います。
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